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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第1章 1皿目
「…改めて見ると酷いね。この匂いは…ブランデー? 結構奮発したみたいだね」

「ごめんなさい…良いお酒だったのに、台無しにしちゃった…」

「何言ってるんだ。酒なんてまた買えばいいだろ。栞の体に替えは無い。体に傷が無いことの方が遥かに大事だよ…ケガが無くて、本当に良かった」

 洲は呼吸するだけで精一杯の私の手を掴み、優しい眼差しで言い聞かせるように包んでは揺らす。愛する妻の無事を何よりも優先してくれる理想的な夫。なのにこの後のことを思うと、一体何の意図があるんだろうと勘繰ってしまう。エッチのし過ぎか血の巡りが速くなっているのが、洲に握られた手のひらの脈拍から感じ取る。

「それに…台無しにしたっていうのは、早急すぎるよ。良いお肉には良いお酒を。俺のことを想って、こんな良いお酒を選んでくれたんだ。そんな特別な酒、一滴だって無駄にするもんか」

 洲はそう言うと床に散らばるガラス瓶の欠片の中から、まだ元の形を保っている大きな欠片を拾う。手が切れること等造作もないと言わんばかりにつまみ上げた瓶の破片は、その中身をブランデーで満たす楕円上の器と化している。まさかそれを飲むのかといぶかしんでいると、洲は本当に私の目の前で飲み干してしまった。

 渇きを訴える水飲み鳥に、恵みの雨を降らす様に。
 チョロチョロ、ゴクゴクと。

 そのほとんどは口元に到達することなく、ぽたぽたと落ちては床に小さな琥珀色の水溜まりを作る。

「しゅ…洲?」

 一体この人は何をしているのか。そう戸惑いを隠せない程の奇行に、むくむくと活力を取り戻すフェニックスが代わりに私の疑問に答えてくれた。

 天高く屹立しているのはもちろんのこと、プロテインでも多量に摂取したのか、限界まで海綿体を膨張させ血筋張っている。ぴくぴくと怪しげな疼きを見せては、神の雫を受けててらてらと艶めくそれは、もはや人間の物とは到底思えない。
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