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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第2章 2皿目
「…どう見ても何かあったとしか思えませんけど。まぁ話したくないんだったら、別にいいです。僕は先生の彼氏でも何でもなく…ただの雇われの身ですし。自分で解決できるならそれでいいんじゃないですか?」

 煮え切らない瀨尾君が手を差し伸べてくれたにも関わらず、私がその手を拒絶したことで私達の間に嫌な空気が走る。瀨尾君の親切心に私はごめんなさいと一言、人として返さなきゃいけないのに、身体が萎縮してしまい上手く言葉にできない。

「…あ!! これなら任せられるかも!! 瀨尾君これお願い!! 修正するだけだから!! ね!?」

 空気にいたたまれなくなった私は、別に気に留めていなかったネームの修正箇所を無理やり引っ張りだし、早口で捲し立てて瀨尾君に押し付ける。瀨尾君はより一層眉間のシワを増やし、「分かりました。」とぶっきらぼうな口調でネームをふんだくる。

 怒りのオーラでデスクに戻る瀨尾君を見送りながら、私はこうなったのも全部あいつのせいだ…と心の中で洲を責める。私が誘惑したからとか、そんなのカンケーない。あの人があんなことしたのがいけないんだ。私は何一つ悪くない。こうなったのも全部全部、あいつのせいなんだ…理不尽にも夫を責めることでしか平静を保てそうになかった。

 このままじゃダメだ。瀨尾君にも悪いし、私の気がおかしくなってしまう。今日。今日帰ったら洲に聞くんだ。

 昨日のあれは何だったのか。
 どういうつもりで、あんなことしたのか。

 …いや、違う。あれは全部夢であって…私達は何も変わっていないんだっていうことを、明らかにしなきゃいけないんだ。

 何一つ変わらない、いつもの日々を取り戻すためにも。
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