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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第2章 2皿目
決意を固める私をよそに、視界の端でネームに怒りをぶつける様にビチャビチャとホワイトを塗りたくる瀨尾君を捉える。そんなに塗ったらネームはおろか紙がボロボロになってしまう。漫画家の命とも呼べるネームに対する冒涜に、私は叱り飛ばさなきゃならないのに、どういう訳か身体が言うことを聞かず、私は白く染まっていくのを見届けることしかできなかった。
四苦八苦して描き上げた渾身の黒一色の世界に、白の異物が侵食してくる。最初はただの水滴だったのが、みるみる内に洪水に変わり、華やかで楽しい嘘の世界を無に帰していく。真っ白なインクに汚されていく命を前に、私のどこか奥の方で白い何かが渦巻いているのを感じ取り、きゅうと締まるナニかと共に髪の先まで悪寒が走る。
「嘘じゃないよ」とどこからか聞こえた気がした。
幻聴だ。こんなこと…全部、気のせいだ。
そう言い聞かせるように、私は目の前のネームに細く緻密なカケアミを走らせ、黒く、黒く塗り潰していった。
四苦八苦して描き上げた渾身の黒一色の世界に、白の異物が侵食してくる。最初はただの水滴だったのが、みるみる内に洪水に変わり、華やかで楽しい嘘の世界を無に帰していく。真っ白なインクに汚されていく命を前に、私のどこか奥の方で白い何かが渦巻いているのを感じ取り、きゅうと締まるナニかと共に髪の先まで悪寒が走る。
「嘘じゃないよ」とどこからか聞こえた気がした。
幻聴だ。こんなこと…全部、気のせいだ。
そう言い聞かせるように、私は目の前のネームに細く緻密なカケアミを走らせ、黒く、黒く塗り潰していった。