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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第2章 2皿目
…そんな昔話を思い出しながら、私は渡された作品を前に固まることしかできなかった。瀨尾君が出すのは大御所の少年誌の新人賞。私とは畑違いのジャンルとはいえ、ネームを読む手が止まらない。止まらないのだ。歳はもちろん、私よりも経験年数が少ないにも関わらずこの完成度…師匠の名折れと言わざるを得なかった。
「…もはや何も言うことはありません、瀨尾大先生」
「先生はあなたの方でしょう? 何デビュー前のひよっこの作品に負い目を感じてるんですか。みっともない…」
「うぅ、面目無い…仰る通りで御座います…でもでも!! 凄く面白いよ、瀨尾君の作品!! 構図もストーリーも完璧。特に構図…本当に上手くなったね…見違えたよ。もう私から教わることなんて何もないね…入賞、期待しているよ」
一切のお世辞も妥協もなく、私は本心から瀨尾君の若き才能を褒め称える。その姿が眩しいのか、瀨尾君は罰が悪そうに右手で左の二の腕をぎゅっと鷲掴んで、「そう、ですか…ありがとうございます」と伏し目がちに返事をする。褒められても心から喜べない、素直じゃないところも若さ故だろうなと思う。
「ごめんね、時間取らせちゃって。この後バイトでしょ? 生活かかっているとはいえ、無理しちゃダメだよ?」
「心配してくれるなら、一秒でも早く売れっ子になって、給料上げて欲しいんですけどね…」
雇い主に小言を言いながら、瀨尾君は手早く荷物をまとめる。ここからそう離れていない所にある、路地裏にひっそりと佇む本格中華料理店。そこが瀨尾君のバイト先である。地元の人達にしか知られていないであろう、良く言えば隠れ家的なその店は、絵に描いたようなべん髪の中国人オーナーが切り盛りしている。
瀨尾君は私の所で働く前からそこで働いており、長年勤めていることもあってそこでバイトリーダーを任されているらしい…と言っても、街の一中華屋さんが大繁盛する訳もなく、バイト君は未だに瀨尾君のみである。
「…もはや何も言うことはありません、瀨尾大先生」
「先生はあなたの方でしょう? 何デビュー前のひよっこの作品に負い目を感じてるんですか。みっともない…」
「うぅ、面目無い…仰る通りで御座います…でもでも!! 凄く面白いよ、瀨尾君の作品!! 構図もストーリーも完璧。特に構図…本当に上手くなったね…見違えたよ。もう私から教わることなんて何もないね…入賞、期待しているよ」
一切のお世辞も妥協もなく、私は本心から瀨尾君の若き才能を褒め称える。その姿が眩しいのか、瀨尾君は罰が悪そうに右手で左の二の腕をぎゅっと鷲掴んで、「そう、ですか…ありがとうございます」と伏し目がちに返事をする。褒められても心から喜べない、素直じゃないところも若さ故だろうなと思う。
「ごめんね、時間取らせちゃって。この後バイトでしょ? 生活かかっているとはいえ、無理しちゃダメだよ?」
「心配してくれるなら、一秒でも早く売れっ子になって、給料上げて欲しいんですけどね…」
雇い主に小言を言いながら、瀨尾君は手早く荷物をまとめる。ここからそう離れていない所にある、路地裏にひっそりと佇む本格中華料理店。そこが瀨尾君のバイト先である。地元の人達にしか知られていないであろう、良く言えば隠れ家的なその店は、絵に描いたようなべん髪の中国人オーナーが切り盛りしている。
瀨尾君は私の所で働く前からそこで働いており、長年勤めていることもあってそこでバイトリーダーを任されているらしい…と言っても、街の一中華屋さんが大繁盛する訳もなく、バイト君は未だに瀨尾君のみである。