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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第1章 1皿目
「うん…うん…今日も美味しいよ?」
「…ごめんなさい。無理しなくていいよ」
私の静止をよそに、洲は苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、渾身のコゲ肉を平らげた。作ってもらった物は残さず食べるを信条にしているらしく、洲はいつも私の失敗料理を消化してくれる。きっとそれが愛する妻に対する夫の務めだと思っているのだろう。そんなこと、して欲しい訳じゃないのに…
「ごちそうさま…毎回思うけどさ、なにもできないのを無理して頑張らなくてもいいじゃん。一々料理作るの大変でしょ。栞も締め切りに追われて忙しいだろうし、別に貧乏家族って訳じゃないんだから、数百円掛ければ美味い飯なんていくらでも食えるし」
洲の言う通りだ。反論の余地もない。
でも、それじゃダメなんだ。
それじゃあなたのハートは掴めない。
もう一度掴みたいのだ。そして…
皿を洗い場に置きそのまま風呂場に直行しようとする夫を、私は反射的にYシャツの袖を掴んで引き留めてしまう。掴んだはいいが緊張で次の言葉を紡ぎだすことができず、私達の間に微妙な空気が走る。別に言わずとも次の言葉は二人とも分かりきっている。だけどせがむ以上、私から言わなくちゃいけないんだと自分に言い聞かせる。
「お風呂、終わったらさ。今日こそー」
「ごめん」
エッチしたいなーっておどけて言おうとする前に洲に遮られ、私の指をすり抜けて風呂場へ向かってしまう。親指と人差し指に残る夫の余韻に、私は少しでも触れられた悦びを感じようと指をくるくると擦り合わせる。年甲斐もない可愛らしさに我ながら温かい気持ちになるも、心はみるみる内に冷えていく。ついに耐えきれなくなった私はテーブルに突っ伏して、いつもの呪文を唱える。
『今日もできなかった』、と。
「…ごめんなさい。無理しなくていいよ」
私の静止をよそに、洲は苦虫を噛み潰したような顔をしながらも、渾身のコゲ肉を平らげた。作ってもらった物は残さず食べるを信条にしているらしく、洲はいつも私の失敗料理を消化してくれる。きっとそれが愛する妻に対する夫の務めだと思っているのだろう。そんなこと、して欲しい訳じゃないのに…
「ごちそうさま…毎回思うけどさ、なにもできないのを無理して頑張らなくてもいいじゃん。一々料理作るの大変でしょ。栞も締め切りに追われて忙しいだろうし、別に貧乏家族って訳じゃないんだから、数百円掛ければ美味い飯なんていくらでも食えるし」
洲の言う通りだ。反論の余地もない。
でも、それじゃダメなんだ。
それじゃあなたのハートは掴めない。
もう一度掴みたいのだ。そして…
皿を洗い場に置きそのまま風呂場に直行しようとする夫を、私は反射的にYシャツの袖を掴んで引き留めてしまう。掴んだはいいが緊張で次の言葉を紡ぎだすことができず、私達の間に微妙な空気が走る。別に言わずとも次の言葉は二人とも分かりきっている。だけどせがむ以上、私から言わなくちゃいけないんだと自分に言い聞かせる。
「お風呂、終わったらさ。今日こそー」
「ごめん」
エッチしたいなーっておどけて言おうとする前に洲に遮られ、私の指をすり抜けて風呂場へ向かってしまう。親指と人差し指に残る夫の余韻に、私は少しでも触れられた悦びを感じようと指をくるくると擦り合わせる。年甲斐もない可愛らしさに我ながら温かい気持ちになるも、心はみるみる内に冷えていく。ついに耐えきれなくなった私はテーブルに突っ伏して、いつもの呪文を唱える。
『今日もできなかった』、と。