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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第2章 2皿目
「くくっ。あははは!! すみません、冗談です。虫じゃなくて、アヒルの卵だそうですよ」
「…今月の給料無し!!」
頭にきた私は雇用主という立場を利用して、悪戯好きの悪ガキに罰を与えようとするも、すぐさま「じゃあ次回作から一人で頑張って下さいね」と反論されてしまう。言い返すことができなくなった私は、バカだのボケだの安っぽい罵倒を繰り返したり肩をひっぱたくことしかできず、次第にそれが滑稽に思えて頬が緩んでいた。
「いて!! いてて!! ごめんなさい反省してますから!! …ふぅ。やっといつもの調子が戻ったみたいですね。今日の先生、ずっと沈んでたし。らしくないですよ」
呆気に取られる私に真っ直ぐ向き合って、瀨尾君は微笑みながらそう言い放つ。私の漫画でも何回と使い回しているやり取りなのに、いざ自分が体感するとなると、赤面必至なシーンにこの後どう返せばいいのか分からず戸惑ってしまう。
真っ直ぐに瀨尾君の顔を見れない私に、春の日射しの様な暖かい沈黙の時間が流れていく。もし私が既婚者じゃなかったら、この歳で恋の予感というものを体感できたかもしれないな…なんて思ってしまった。
「あ…ああ、あり、がとう…」
声が上ずり、既婚の大人と思えない程の動揺っぷりに私自身でさえ情けなくなってくるも、瀨尾君はそんな私に「いえ…どういたしまして」とどこか照れ臭そうな声色で返す。いつもの小馬鹿にしていく彼独特のスタイルはなりを潜め、この八畳一間の空間だけタイムスリップしたかのように、青い春の初々しさが私達を包む。
「…あ!? やっべ!! もうこんな時間!! それじゃお先です、先生!!」
頭が沸騰して働かない私に、世界は残酷にも時を進めて夢時間を引き離す。猛スピードで階段を掛け降りる音をクラシックのコンサートの様に聞き入る私は、そのまま数分放心した後に、鳩尾下辺りに走った緊張によってハッと意識を取り戻したのだった。
「…今月の給料無し!!」
頭にきた私は雇用主という立場を利用して、悪戯好きの悪ガキに罰を与えようとするも、すぐさま「じゃあ次回作から一人で頑張って下さいね」と反論されてしまう。言い返すことができなくなった私は、バカだのボケだの安っぽい罵倒を繰り返したり肩をひっぱたくことしかできず、次第にそれが滑稽に思えて頬が緩んでいた。
「いて!! いてて!! ごめんなさい反省してますから!! …ふぅ。やっといつもの調子が戻ったみたいですね。今日の先生、ずっと沈んでたし。らしくないですよ」
呆気に取られる私に真っ直ぐ向き合って、瀨尾君は微笑みながらそう言い放つ。私の漫画でも何回と使い回しているやり取りなのに、いざ自分が体感するとなると、赤面必至なシーンにこの後どう返せばいいのか分からず戸惑ってしまう。
真っ直ぐに瀨尾君の顔を見れない私に、春の日射しの様な暖かい沈黙の時間が流れていく。もし私が既婚者じゃなかったら、この歳で恋の予感というものを体感できたかもしれないな…なんて思ってしまった。
「あ…ああ、あり、がとう…」
声が上ずり、既婚の大人と思えない程の動揺っぷりに私自身でさえ情けなくなってくるも、瀨尾君はそんな私に「いえ…どういたしまして」とどこか照れ臭そうな声色で返す。いつもの小馬鹿にしていく彼独特のスタイルはなりを潜め、この八畳一間の空間だけタイムスリップしたかのように、青い春の初々しさが私達を包む。
「…あ!? やっべ!! もうこんな時間!! それじゃお先です、先生!!」
頭が沸騰して働かない私に、世界は残酷にも時を進めて夢時間を引き離す。猛スピードで階段を掛け降りる音をクラシックのコンサートの様に聞き入る私は、そのまま数分放心した後に、鳩尾下辺りに走った緊張によってハッと意識を取り戻したのだった。