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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第2章 2皿目
「そんなコソコソしてどうしたの? 栞」

 雷の様に私は全身総毛立ち、少し遅れて声帯がはち切れんばかりに絶叫する。近所迷惑同然の声量を出しながら振り返ると、そこには水の滴る良いゾンビ…ではなく洲が、耳を人差し指で押さえ付けながら苦悶な表情をしていた。ホラー映画さながらのビックリ演出に私は気が動転して腰を抜かすも、洲の格好を前に身体中に血が急速に回り始め、抜けそうな気力を無理やり戻される。

 ホカホカの湯気をまとう、見るからに温かそうな裸体。肩にかけたバスタオル以外の布地が見当たらないしっとりと濡れた全裸姿は、記憶にこびりつく洲のカラダと見事に一致し、私を見事に紅潮させる。しかし恥ずかしさのあまり目線を下に向けた時に飛び込んだ、乾燥キノコの様なしわしわの皮を被ったアレのおかげで、不思議と緊張が和らいでいく。

「…すぅ…はぁ。ただいま、洲。こんなに早いなんて珍しいね」

「いっぱしのレディがそんなとこ見ながら喋るんじゃありません。…おかえり、栞。遅かったから先に風呂入っちゃった。ごめんね」

 いいよそんなことくらいと言う私の言葉を背に、洲は裸のままダイニングチェアに腰をかけ、缶ビールをプッシュっと開ける。暑がりの洲はこうしてしばしの間体の熱を冷ますという、オッサン臭く見苦しい癖がある。結婚当初はこの悪癖が嫌で嫌でしょうがなく、私の機嫌が悪い時はケンカしたこともある。だがそれも四年も経ってしまえば、何の感慨も浮かぶことのない日常と化してしまった。

 それでも今日の私は、洲の肌色姿をただの日常とすることができなかった。筋肉質とも肥満体とも言えない、細目の優男体型。その体に付いている、これまた見事に情けない萎びた男のシンボル…

 これが昨日の、未だに脳裏に粘りつく淫夢を見せたのだと思うと、にわかに信じがたく、一体どれだけムラムラしたらあんな夢を見るんだ私、と呆れてしまう。
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