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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第2章 2皿目
 それでもレスの期間は三年。そして夫婦生活は四年目。つまりこの仮性包茎気味の夫と…一夜を共にしたことがあるのだ。

 今となっては大変貴重な一夜だけど、惜しいことに私はその日のことを覚えていない。記念すべき結婚初夜は漫画の締切に追われて、ナニする所ではなかった。そこからレスに突入するまで一度はしたはずなのに、その日のことをてんで思い出せないのだ。

 そんな認知症の疑いをかけられてもおかしくない私が、記念すべき一夜があったと言いきれるのは、あの朝の目覚めがあるからだ。

 お気に入りの枕よりも狭く固い、なのに心地よい洲の腕の中で朝を迎えた私は、お互いに肌色一色なことに気づいた。あまりに突然なことに跳ねるように起き上がると、下半身…特に腰から尻にかけてヒリヒリとした痛みが走った。

 予期せぬ痛みに私が「いたた」と言いながら擦ると、洲ははにかんだ顔をして、「ごめんね…でも、気持ちよかったよ」と優しく呟き、私の体を抱き締めたのだ。その刹那に起きた奥の疼きに、私はようやく愛するこの人と初夜を果たしたのだということを理解したのだった。

 何ひとつ記憶に残ってない、幻の初夜を。

 洲の話を信じるならば、私は飲み過ぎで記憶を失ったらしい。

「あ、あのね。洲…昨日の、こと…なんだけどー」

「外寒かったでしょ? 最近急に冷え込んできたもんね。お風呂沸いてるから、栞も早く入ってきなよ」

 昨日のことがどうしても気になる私は、いてもたってもいられず唐突に聞き出そうと試むも、まるでその話題を避けるかのように洲に遮られてしまう。今日一日ずっとそのことで頭が一杯で、洲に会ったらすぐにでも聞き出そうと決心したのに、洲のわざとなのか自然体なのか判らない促しに、私は呆気なく流されてしまう。
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