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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第2章 2皿目
「ねぇ…しゅ、んっ!! うむぅ…ちゅう…へあぁ…」

 屈んだ洲の唇に吐き散らす言葉を塞がれ、舌に絡めとられて消えていく。心から漏れでる不安を丸呑みにしていく洲は、それを塞ぐように耳を手で優しく覆って、悲しくて苦しい世界から私をシャットアウトする。瞳を閉じればちゅっちゅうとしたリップ音や、ちゅくちゅくとした舐めずり音が木霊しては反響し、音はどんどん大きく鳴り響き脳を揺さぶる。

「へはぁあ…しゅー…もっと…」

 脳震盪で麻痺し、間抜けになった頭に残った物は欲望。それも知性の欠片もない動物的な欲望だけだった。例え人間性を失った快楽の獣に成り下がっても、気持ち良ければそれでいい。ただこうして唇を交わし、唾液を混ぜあって啜りあいたい。それさえあればいい。それさえあれば、愛なんて不確かなものなん…て…

「ん…ちょっとは落ち着いた? 栞はさ。考え事が多いんだよ。考えるんじゃなくて、感じなきゃ。何にもしないで…ただ俺が与える愛を感じていれば、それでいいんだよ。ほら、眼を閉じて感じて? 愛してる…愛してるよ、栞…」

 なのに洲は私が捨て去ろうとするものを押し付けて、私の自己暗示に待ったをかける。頭の中でごちゃごちゃとしたもの全て洗い流しては肉欲で埋めていくくせに、愛を感じてと囁く洲に私は何を信じて拠り所にすればいいのか分からなくなる。私という存在をどこかに留めたいのに、愛の嵐は地に足を付けることを決して許さず、ただその身に風を受けろと吹き飛ばし舞い上げる。

 じゅくじゅくという水音に呑まれた私に、洲は調教完了とばかりに洗脳ヘッドホンをゆっくりと解く。耳を包みこむ温もりが失くなっても、私の聴覚はまだ舐めずり音をけたたましく感じ取り、全神経をジャックして私の身体を行動不能にする。開きっぱなしの口から零れる涎の量も、開いてるのに焦点が合わずもやみたいに霞む視界も、上に、下に素肌を滑る布の感触の後にくる肌寒さでさえも、その全てに何も対処することができずなすがままにされてしまう。
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