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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第2章 2皿目
「むへ…」

 温もりが消え去り、ぞわぞわと寒さが肌に突き刺さる私に、洲は両手を頬にあてがい、ふいに指で口角を三日月の様な弧の形に引っ張る。あまりに突然のことで変な声が出てしまい、それが面白かったのか洲は突然くっくっと笑い出す。

「栞。ほら、スマイルスマイル。泣き虫な栞も可愛いけど、やっぱり笑顔の栞の方が断然可愛いよ。ほら1+1は?」

 楽観的な小学生みたいにバカっぽく『にー』と言わせたいのだろうけど、生憎こちらは放心状態の悲しみにくれる大人なのだ。出てくるのは陽気な掛け声じゃなくて、理解不能による不信と不安の涙だった。

「正解、よくできました。答えはツーでしたぁ…はぁ。栞。気持ちはわかるけど、いっぱしのレディがそんなに泣いちゃダメだよ。折角の美人が台無しだよ?」

「だって…洲、なにも答えてくれないじゃない。質問に答えてよ。答えてくれるまで泣くの止めないから」

 罰が悪そうに少し伏し目がちになる洲に、私は呆然自失となりながらも返答を迫る。面倒くさい女だと思われても構わない。だって洲は卑怯だ。あの手この手で私の疑問に答えるのを明らかに避けている。いくらあなたの妻だからって、あんなキス程度で…都合の良い女にしようとする洗脳なんかに、私は屈したりなんかしない。
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