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Eat me 完熟媚肉と秘蜜のレシピ
第1章 1皿目
「もう手作りは潔く諦めて、近くのお店で売っている出来合いのものにした方がいいんじゃないですか? というかそもそも先生、周りくどいッスよ。 素直にして欲しいって粘り強く頭下げ続ければいいじゃないですか。レス解消できればそれでいいんだし」

「嫌だよぉー、前に何度も断られているのに、今更せがむなんて盛っているみたいで恥ずかしいじゃない。一人の男を愛する由緒正しき妻として、どうしても自然な流れでロマンティックに持ち込みたいんだよぉー。私のアシやってるんだったら分かるだろぉー!?」

 心底ウザそうな顔をしては夢見がちなメルヘン喪女に塩を撒く瀨尾君に、私は次の一手を催促する。私を邪険に扱う彼だが、いつも私の愚痴を聞いてくれる公私共に頼もしい後輩だ。泣きつけば某猫型ロボットの様に知恵を授けてくれる。持ち前のルックスだけでなく、料理も得意な完璧男子に私はいつも世話になりっぱなしである。

「どうしても、というなら…そうですね…ステーキ、とかどうですか? いい肉さえ使ってれば塩かけるだけで美味いし、いくら料理ベタな先生でも肉焼くだけならできるでしょ。焼いてる間ずっと張り付いていればいいんだし」

 凄く馬鹿にされていると感じつつも、私は黙って若先生のありがたきお言葉に耳を傾ける。目的のためには手段を選ばないし、余計なプライドは不要だ。

「ステーキだけじゃ駄目です。ちょっと良い赤ワインも用意して下さい。あんまり高いと何かあるんじゃないかって気が引けるんで、千円ちょっとの安いやつでいいです。それでいい雰囲気作って、酔わせたら後はお得意の誘惑、効果薄かったら押し倒し。これで決まりです」

「私、洲よりお酒弱い…先に寝ちゃうかも」

「はぁ…じゃあ先生はワイン1杯だけでいいです。付き合ってあげないとテンション上がらないんで。どうせ旦那さん仕事終わりだし、最初の一杯はビールでしょ? ワインでチャンポンさせれば向こうの方がすぐ潰れますよ」

 経験者は語る風情を存分に醸しながら、瀨尾君は私のために作戦を考えてくれる。ご時世上、彼のプライバシーに関することは安易に触れないように心掛けているけど、私みたいな女の悩みを聞くだけじゃなく、解決策まで考えてくれるのだ。きっとモテモテで彼女さんとも上手くやれてるんだろうな、とつくづく思う。セクハラになるからいるかは聞いたことないけど。
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