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Kiss Again
第6章 暗い力

 「ねぇ 周くん」
  おれは CDでも聴こうかと何枚かを手にして 「なに?」

 「周くんは 彼女から お金借りたこと ある?」

 質問の意味が わからない。
 「タクシー代とか 映画代とか、のこと?」

 「うーーーん・・・ もうちょっと 大きな金額」
  愛美は ベッドに腰かけ 足をぶらぶらさせている。
  CDを持ったまま 隣に座った。

 「たとえば 旅行代とか?」
 「うーーーん・・・洋服代とか・・・」

 なにっ?
 それっ?

 愛美が スプーンでプリンをすくって おれの口に差し出す。
  無意識に 食べる。

 「ビンテージものの財布とか・・・時計とか・・・」
  また プリンが口まで近づく。
 それを食べると スプーンを取り上げ 今度は おれがプリンをすくって 愛美の口に近づける。愛美も 無意識っぽく 食べた。

 「愛美は 彼氏に そんなもの 買ってあげるんだ?」

  「うんと、ね・・・ お金 かして、って・・・」

 「返してくれるの?」

 「初めの頃は 返してくれてたんだけど・・・」

 もう一度 プリンを愛美の口元に近づける。 無意識に食べる。

 「カードの限度額がいっぱいになって・・・ また新しいカード作って また限度額いっぱいになって・・・ また違 うカード作って・・・」

 最後のプリンを食べると 愛美の目から 涙が落ちた。

 「車のタイヤを買い替えるから 50万円 いるんだって・・・」

 「無理、って言ったら 30万でいいから、って」

  もう足をぶらぶらさせていない。

 「それを 断ると ”愛美は 経理だよね” って・・・」

  愛美の肩は 激しく震えている。

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