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Kiss Again
第6章 暗い力

 駅まで行くと
 「ここ 高円寺だったんだ」

  あれから 初めて 外に出た愛美が言う。

 「約いちめい 酔いつぶれていらっしゃいましたから。
 ご存知ないでしょうけど 高円寺です」

 新宿で乗り換えて 明大前まで行った。
  愛美は ほとんどしゃべらず 手をつなぐと 冷たかった。

 大学時代から 引越していないという。
 確かに 駅から近いし こじんまりとした住宅街で 女の子が住みやすい環境だった。 ひとつところに6年以上住め ば 都になっただろうし。
 その都を 取り上げようとする男がいる。

  愛美の部屋は 日当たりが良く静かだった。
 間取りは おれの部屋とほとんど変わらないが ダイニングが少し広く 寝室は6畳だった。
  もっと女の子らしい部屋を想像していたが なんか愛美らしくない ちぐはぐな感じのする部屋だった。


 カーテンは 落ち着いたベージュ地にバラの花のすかし模様があるものなのに ダイニングに置いてある温かみのある薄いグレイのラブチェアには  赤と黒のクッションがおいてある。
 ローテイブルは とってつけたようなマホガニー色。
 ベッドカバーは黒で 枕カバーも黒だった。 ホビーラックには 高価そうなバイクとフェラーリのプラモデル。男性用のファッション雑誌 や車の本。化粧品、小物。半透明のプラスチックボックスに入った高価そうな3足のスニーカー等。申し訳なさそうに女性も ののアクセサリーが入ったクリスタルの器。観葉植物。

 愛美の生活に 徐々に侵略してきた男の色が ちりばめられている。

 冷蔵庫からお茶のペットボトルを取り出し
  「周くん ちょっとここで待っててね」
  とラブチェアを指して 言った。

 おれは 奇妙な客人だった。

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