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Kiss Again
第9章 朝になる
 ベッドから降り おれのそばまでくると
 「おはようございます」
 おれの髪に キスをした。

 えっ・・・

 「コーヒー いただいても いいですか?」

 コーヒーカップを一旦テーブルに置くと もう一度 おれの後ろに立ち ゆるく頭を抱きしめて髪にキスをし
 「周くん ありがとう」
 それから 椅子に座り 静かにコーヒーを飲んだ。



 今のは さよなら?


 そっか・・・
 はじまりは なかったんだ、とわかった。



 「周くん ごめんなさい。 駅までの道が わかりません。 一緒に行ってください」
 コーヒーを飲み終わって 着替えた愛美が言う。

 なんで あやまるの?

 ここで 笑わないと。
 「いいよ」

 笑えたかな。


 駅までの道のりは 硬いものだった。

 昨日から感じていた 通い合えたような温かさや 身体の中に漂うふわふわした感じも どこかに消えてしまっていた。


 今日で 愛美はいなくなるのはわかっていた。

 でも こんなに 簡単?

 あんなに濃密にひとつになれたのに。 
 愛美のひんやりとした腕の感触は まだ首筋に残っている。
 耳元で聞いた おれを呼ぶかすれた声。

 あの時間は おれの中にしか残っていないのだろうか?

 それでも離れがたく 遠回りをした。 愛美は 方向音痴なのか 気がついていない様子だった。 言葉をさがしたが みつからない。 今更 何を言えばいいのか。

 あんな時間の後で。

 ほとんどしゃべらず 駅に着いた。

 「周くん ありがとう」と言うと 駅の改札を抜け 少し歩くと立ち止まり 愛美は振り向いた。
 
 胸の辺りまで挙げた手を小さくふり 唇が 「ばいばい」と動いた。

 おれも 同じように手を挙げた。 何も言わなかった。



 今日 愛美は 一度も笑わなかった。

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