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Kiss Again
第10章 スターダストにて
 「安部ちゃん、って にぶいって言われたことありませんか?」
 にこにこしながら マスターが言う。

 『スターダスト』には おれの他には 奥のテーブル席に一組のカップルがいるだけだ。

 マスターは 顎のところに上品な髭をたくわえた37,8歳の 渋みのある結構いい男。 どこかのホテルのマネージャーをやっていたことがあるだけに 物腰がきれいなんだよな。

 「言われたこと ないです」

 いや。 元カノには 何度かそう言われた。

 「じゃあ 天然?」
 「いやいや。キレ者で通っていますけど」

 お酒の席での軽口のやりとりだ。

 「こと 恋愛に関しては 天然?」
 「恋愛でも やり手で通っています」
 「やり手なのに あんなラブラブビーム見逃すなんて もったいなくないですか?」

 グラスなんかを片付けながら バイトのトシクンまでが そんなことを言う。
 なんの話だろう。

 「愛美ちゃん 来なくなっちゃったから」


 どくん、と心臓が鳴った。

 「愛美 最近 来てないんだ」

 「はい。 随分 来られていないんですよ」
 マスターの目が 知ってるくせに、と言っているような。

 マスターは 何気に 愛美がお気に入りだ。 カウンターに愛美が座ると チョコを何粒かおまけしたり 「新しいカクテルを作ってみたんですよ」とか言って 愛美に試飲させたりする。 「口紅 変えましたか?」というのも 聞いたことがある。 別に下心があって言っている様子ではなく ちょっと特別、みたいな。

 そんなことにも ふわっと笑って 応える愛美。


 やっぱり 来てないんだ。 ここには。


 そんな会話をした後のこと。

 冬になる前の休日に 新宿での用事をすませた後、明大前の愛美のマンションまで行ってみた。
 一度しか行っていないのに ちゃんと覚えているものだ。

 集合ポストの名前は 違う名前になっていた。
 それでも 住人がオートロックを開けたのについて部屋の前まで行った。 表札も知らない名前だった。



 おれの人生から 仲村愛美が消えたのを 確認しただけだった。

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