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離島性体験 〜M男君〜
第2章 1986年に5月に起きた悲劇
引っ越し最後の日、業者の人が荷物をまとめて荷物を運び出した。二つの骨壷だけは卓郎と先生がトラックに積んだ。

「終わったね。今日は家にくる?もうなにもないし」

卓郎は先生の声に浮わついて目が泳いだ。

「なに?嫌ならいいよ。面倒見てあげたいだけだから」

お願いします。そう答えた時には卓郎の頭の中で妄想は始まっていた。初めて入る1人で暮らす女性の部屋。想像する香り、色も空気もそこだけは違う空間。知らない花園を吸いにいく。

「ただいま、お母さん今日、この子泊めるね」

「例の子よ。最近、話したでしょ。明日から島に行くのよ。家になにもないから連れてきた。ビール?ビール?ビールないの?」

卓郎の想像とは違ってた。1人暮らしでもなければ花園でもなかった。そして卓郎がみた先生の私生活は女性というより1人の人間らしい一面だった。

「食べてよ。たくさんあるんだから。二人で食べてたでしょ。お母さんたくさん作るの。旨いんだけどね」

卓郎にとってもう失くした、手放した家族は存在していない。そんな卓郎はこの夜、家族に甘えた。



「ここで寝てね。おやすみ。」

先生にそう言われてまた卓郎はラジオを聞きながら眠る。毎日そうしないと眠れない。寝る時と朝だけが1人だった。

ラジオ番組の世界に一人、浸かっていた。
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