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Kiss Again and Again
第9章 高梨さん
展示会場にもどると 高梨さんのお母さんは
「ほんまに 宣伝してきてくれたんやなぁ。 そう言いはるお客さんが 何人か来てくれはったらしい」
展示会場には 何店舗か お店もどきを展開しているから ここだけを目指して来るお客さんばかりではなかったのだ。
「愛美ちゃんの振袖がよかったみたいで 見に来て 赤い振袖 こうてくれはった」
「えっ? 振袖が 売れたんか?」
そういえば 衣桁に掛かっている振袖が さっきより薄い赤色のものになっている。
そんなに簡単に 振袖のような高価なものが 売れるの? 驚きだった。
それを察したかのように
「こういうことは ご縁やから」
「和、 愛美ちゃん 控え室に連れてって 着替えさせてやって」
「えーーーっ もう脱ぐのん? もったいない。 もうちょっと そのままここにおってくれはったらええのに」
「おかあはん。 愛美ちゃんかて もう疲れてんのや」
「ええやん。 今日はこのまま 泊まっらはったら」
「スィート とるでぇ」
「かまわん。 スィートでも ソルトでも とったらええ」
なんか 高梨さんが 二人いるみたいな会話。
「和。 行きっ」
和さんは くすくす笑っている。
和さんと 控え室に行き 帯をほどいてもらったり 脱ぐのを手伝ってもらった。 ワンピースは さすがにシワだらけになり しっとり汗ばんでいた。
いい、というのに 和さんは ワンピースをプレスに出してくれた。 30分ほどでできるらしい。 待っている間は 化繊の簡易着物を着せてもらい コーヒーを頼んでくれた。
「愛美さんは 兄の恋人ですか?」
さすがに 和さんには 嘘はつけない。 首を振ると
「そうなのですね。 やっぱり」
和さんは 高梨さんのこと 気づいているみたいだった。
「でもね 大好きです。 今日 プロポーズもしてもらいました。 まだ 返事はしていないけど」
そこへ 噂の主が登場した。 その絶妙のタイミングに 和さんと ふたりで笑い転げた。
「なんや?」
その 驚いた顔に いよいよ笑った。 高梨さんの家族も好き。 お嫁に行ってもいい。