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Kiss Again and Again
第10章 裏切り
ドアを開けると
「久しぶりだね。 会ってくれてありがとう」
知らない人のように 硬い顔をした 海が現れた。
想像していたより 心がざわついた。 もう 泣いてしまいそうだった。
海のために買ったマグカップではなく ソーサ付でコーヒーを出した。
「あれは 何の花?」
「デンファレンス」
海は 来ると 必ず生けてある花の名前を聞いた。
「嫌な思いをさせてしまって・・・ 悪かったね」
「コーヒーを飲んだら 荷物を 持って帰ってください」
海の顔をみたら 身体がバラバラになってしまいそうなくらい 全身でつらい。
部屋に入れたのは 間違っていた。
「あゆ。 聞いて。 全部 あゆのためだったんだよ」
この人は 何を言っているの?
「アリサは 以前付き合っていた子で ちゃんと別れて それからあゆと付き合い始めたんだ。 ちゃんと 別れてから、だったんだよ。
でも 彼女は そうは思っていなかったみたいで あゆに意地悪をし始めたんだ」
「憶えているだろう? 学食で 残り物をかけられたこと。 すごい匂いで 僕が車で送って行ったこと あったよね。 そんなことする子なんだよ。 そういうことから どうやってあゆを守ればよかったの?」
「そんなことをやってのける子と 本気で付き合ってるとか 思う?」
「あゆだって 知ると 嫌な気分になるでしょう?」
あなたは わたしが どう思うかなんて 本気で心配してる?
わたしが 苦しむかもしれない、なんて 想像した?
あがき もだえ 壊れてしまうかもしれないなんて・・・ 一度でも ほんの一瞬でも 考えてみたの?
「あゆに手をださせないためには その子とも付き合っていくしかなかったんだよ」
あなたの中で どんなにわたしがちっぽけだったかを 思い知らされる。
「こうかもしれない」と想像して苦しんでいたのと 事実を突きつけられるのとでは 全然違う。 事実、なんて いらなかった。
聞かなければよかった。
全身を切り刻まれ 血が滴り落ちる。 受け止めるものもない。 このまま 死んでしまえばいいのに、と願う目まいする絶望感。