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Kiss Again and Again
第12章 旅愁

 露天風呂のスノコになっているところで服を着て 濡れたものは ざっと絞り 椅子に置いた。 部屋に戻ってみると 料理があらかた整っていた。

 「申し訳ないのですが 浴衣と半纏を濡らしてしまったので 替えのものを持ってきていただけますか?」

 仲居さんには こんなことはよくあることなのかもしれないけど 「いったい なにしてたの?」みたいな感じで 恥ずかしい。
 でも 30万円だったら このくらいのわがままは聞いてもらえる?

 「はい。 すぐにお持ちします。 旦那様の浴衣も もうひとサイズ大きいものをお持ちしますね」
 見ると 「旦那様」樹さんの浴衣は 確かに小さい。 袖からも裾からも にょきにょきと手足が出ていて こどもっぽい。

 そんなことも ほんわりしあわせに感じられる。

 温泉って すごい。

 机の上一面に並べられたお料理を食べていたら 蟹に苦戦しているわたしのために 樹さんは きれいに剝いた蟹を渡してくれた。
 「まず メインの蟹を食べなくっちゃ。 あゆちゃんは すぐにお腹がいっぱいになるんだから」
 「ありがとうございます。 でも こんなところに来てまで わたしのお世話をしないでください」
 「いやいや。 旅行中に 僕なしでは生きてゆけないくらいお世話しておこうと思っているから」


 なんで こんなこと さらりと言えるの?

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