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Kiss Again and Again
第12章 旅愁

 樹さんが 前もって頼んでいたのか 日本酒が添えられている。 それを樹さんのぐい呑みに注ぐと
 「せっかくあゆちゃんにお酌してもらえるのだったら 浴衣に着替えて。 その方が 雰囲気がある」
 「えっ? 今ですか?」
 「うん。 せっかく持って来てもらったんだから 僕も着替える」

 隣の部屋で着替えた。 隣の部屋も 結構広い。 旅館って 普通 一間よね。 こんな風に二間続きの部屋なんて よっぽど豪華なプランなんだろうな。

 着替えたものの 樹さんは さっきの浴衣ほどではないけれど やっぱり小さめだ。
 確かに 旅館の浴衣を着て向かい合っていると 旅情が感じられ 注がれるまま 日本酒が進む。


 「宿泊券は本当にもらったんだよ。 疑っているでしょう?」

 なんで わかったの?

 「お礼がしたいって 言ってもらったから ”温泉旅行なんていいなぁ” ってリクエストはした。 ”好きな子を落とせるくらいの旅行がしたいなぁ”って 言っただけだよ。 あっちが勝手に 頑張ったんだよ」
 「このお礼は?」
 「もちろん したよ。 会社宛に お菓子の詰め合わせを たっくさん送っておいたから フィフティフィフティだよ」

 樹さんのスィーツ攻撃は 多分 沢山の人を幸せにしたはずだけど。 こんなお相伴に預かって 申し訳ないような。

 「あゆちゃんを落とせなかったら 取り返しに行くから」
 樹さんは わたしのぐい呑みにもお酒をついでくれる。 

 演歌の世界みたい。

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