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第12章 旅愁

　仲居さんが二人きて　食事を片付け　隣の部屋に　お布団を敷いてくださった。

　和室に　二組のお布団が　並んでいる。
　ベッドを見慣れているせいか　その艶めかしさに　なんだか胸が苦しくなるような。

　仲居さんがいなくなってから　お布団を　少し離した。　
　それでも　まだ　胸が苦しい。

「あゆちゃん。　もう一回　お風呂に入ろうっ」　
　「お腹がいっぱいだし　お酒もいただいたから　お風呂は無理です」
　「だって　明後日には　帰るんだよ」

　来たばかりでしょう？　

　「あゆちゃんが入らないんだったら　このままお風呂に投げ込む」
　この人なら　やりかねない・・・　浴衣が　また　だめになってしまう。
　「じゃあ　お先にどーぞ」
　「ちゃんと　来る？」
　「はい。　そのかわり　向こうをむいていてくださいね」