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Kiss Again and Again
第12章 旅愁

 また 近くで 鳥が鳴く。 それに応じる鳴き声も聞こえる。

 わたしは樹さんの腕に 自分の腕を通した。 樹さんが微笑みながら 脇をしめてわたしの腕に手を置く。

 「そこをふたりで片付けると 残っていた卵で パンケーキを焼いた。 じゅんが紅茶を淹れてくれて ふたりでパンケーキを食べた。 それがなかなか上手にできていて 美味しいものを食べながら ふたりとも久しぶりに笑って話した」

 じゅんと樹さんが 近親相姦しかねないくらい仲がいいのが わかった。

 「美味しいものには 力があるんだよ。 それでパティシエになった」
 「そうなんですか?」
 「意外と 合ってた。 それで 今でも続けている。 これからは あゆちゃんを太らせるために 続ける」

 笑いながら 樹さんの腕にしがみついた。
 この人に惹かれるのには 理由があるんだ。


 「ねぇ。 あゆちゃんは バレエやっていたでしょう?」
 「ええ。 わかりますか?」
 「舞台でも バレエをやっている人は 動きが違うんだ。 殺人犯に向かって ”犯人はこの人です”って指差しても 腕や指先の動きが華麗なんだよ。 お見事だよ」

 わたしたちは 凪いだように笑い合いながら 林道を抜けた。 陽ざしは 途切れることがなくなった。

 滝は ガイドブックの写真より ささやかだった。

 小さめの滝が 何本もある。 どれも真っ直ぐに落ちる。 そして できた湖に 白い泡渦をつくりだす。
 滝がつくりだす細やかな水しぶきで しっとり濡れてきて 肌寒い。 それでも しばらく眺めた。


 この人は 滝のようだ。
 まっすぐ 尽きることなく まっすぐ 落ちる。

 あの白い泡渦に巻き込まれたら 溺れる。



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