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Kiss Again and Again
第21章 はじまりは こんな風に
「あゆ・・・ すきだ」
哀しげな声だった。
「愛してる・・・」
胸がつぶれるような 切ない声だった。
何度も言ったでしょう? セックスするほど好きじゃあない、って。
「だから・・・」
だから?
だから なに?
「あんな男のことは・・・ わすれて・・・」
海は あの日 部屋を追い出された後 戻ってきてオートロックのところにいた、と言っていた。 そこでわたしが樹さんの車に乗り込むのを見ていたと。
空港でも 派手なキスシーンを見たと言っていた。
樹さんは 海を忘れるのに 「僕を利用すればいい」と言った。
利用する、どころか 怖いくらい夢中になってしまい 好きという言葉で縛りたくなくて その背中を押した。
その手で・・・ 背中を押したその手で 引き止めることなんかできなかった。
---これでよかった?
「いかないで」
「待っているから」
そんなことは言えなかった。
だから 忘れなくては。
あなたは?
海・・・ あなたは どうするの?
そして わたし。
わたしは どうすればいいの?
「もう 離れないから。 あんな男は わすれて・・・」
海の髪の毛の中に指を差し入れ 静かに撫でた。 その手を取ると 海は手の平に唇を押し当てた。
「もう 忘れたから。 でも セックスするほどには あなたのこと好きじゃあない」
手の平に唇を押し当てたまま 海がくすり、と笑った。
「あゆは 一貫しているなぁ」
「・・・だって ほんとうのことだから・・・」