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Kiss Again and Again
第21章 はじまりは こんな風に

 海の仕事柄 金曜日に定時に帰り続けることは無理だった。 こんなことをしていたら どこかでシワ寄せがくるだろう、とはわかっていた。

 『ごめんね。 今週末は行けそうにない』
 別に逢う約束をしていたわけではないし 逢わなければならない理由もなかったのに それが二週続いた時に 寂しい、と感じている自分に気がついた。 海は 上手にわたしの生活に入り込んでいた。 海不在の部屋の欠乏感に驚きながら いつの間にか丸め込まれている自分を 寛容に受け入れた。
 わたしは 常にふらふらしただらしのない心を持っているのだ。

 『今週も行けそうにないんだ。 ご飯はどうしていますか?』
 いつだって約束をしているわけではないのに。
 胃袋を掴む作戦は難航している、というわけですか。

 『お仕事 大変ですね。 ご飯はキチンと食べております。 ご安心あれ』
 ラインの返事をそこまで打って ふっと 痩せた海の胸板を思い出した。
 『海は ちゃんと食べていますか?』

 返信はこなかった。

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