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マリアは里奈のセーラー服に手をかけた。
第1章 1
里奈はマリアと別れてからずっと考えていたことがあった。「マリア姉様となら、一緒に暮らせるかもしれない」マリアの優しい心根に触れた里奈にはそれが確信に変わっていた。だが問題はどうやってマリアの了解を得るかである。マリアは自分を妹のように思っている。その自分がお願いしたところで聞き入れてくれるだろうか。それともやはり自分とは距離を置いた方がいいと考えるかもしれない。マリアの気持ちを確かめる方法はないだろうか。「そうだ! いいことを思いついた」思い立つと里奈の行動は早い。
マリアに見つからないように家に戻った。二階へ上がる階段の途中にある部屋に入りクローゼットを開く。奥の方に押し込められていた段ボールの山の中から、目的のブツを見つけ出した。『セーラー服コレクション(女)』(定価800円、B5判・フルカラー写真40枚付き。もちろんコスプレ用。マリアのもの)。以前、マリアから貰ったものだった。「ごめんなさい」里奈はその写真を何枚も手に取った。そして自分の姿を確認する。「よし!」なにがよしなのかは本人にも不明だったが気合を入れた。それから一階に戻り、「あ、ちょっとトイレ」と言いながら居間の方へ入る。「はーい」母の声を聞きつつそっと二階へ戻った。マリアは庭の草むしりをしていたらしい。「マリアお姉さま。ちょっとだけ、手伝っていただけませんか」セーラー服を着て髪をポニーテールに結った里奈を見て一瞬戸惑ったがすぐに微笑を浮かべた。「あら、可愛くなったじゃない。さっきは体操服にブルマーだけだったから、今度はセーラー服も追加しないといけなかったのよ。良かった、ぴったりだったみたいね」里奈が手にしていたものは紛れもなくセーラー服だ!「え?」まさか、マリアはこのためにあんなことを……。「さあ里奈ちゃん。こっちに来て、早く着替えなさい。お洗濯ものを干してから始めるわよ」とことこと近寄ってくる妹の姿があまりにも可憐なのでマリアの顔に笑みが深くなった。「マリアお姉さん、実は話があるんです」
マリアは「うふふ」と笑ってこう答えた。「なあに?里奈さん。おねえさん、貴女の言いたいことはわかるつもりよ」
(完)
ある日、俺はトラック転生なるものを経験した。いや、正しく言えば生まれ変わりなのだが……何しろ物心のつく前の話だったので記憶はあやふやな所が多い。
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