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女たちは生きる
第10章 爽
 車内は金曜日とあってラッシュなみに混んでいた。
 爽は矢島に迷惑かけないように
立ちたいのだか、つり革も届く位置に無くて必死に踏ん張るが
何とも危なっかしくて、矢島は爽を必然的に抱き寄せる形になってしまった。
「ごめんなさい!先輩なのに酔っぱらって……恥ずかしい。」
 爽は、そう言うと俯いてしまった。
矢島は、平常心平常心と唱えながら
「爽さん~お酒弱いからね仕方ないよ~先輩だけどね~」
「そんな~に弱くない!もん」 
駄目だ!なにが もん だ!
しっかりしたくても……甘えたくなる。
体が熱い!心臓が煩い!
聞こえていてたら恥ずかしいよ。

「弱くないもんかっ~弱いもん!でしょ。アハハ」
「ばーか ばーか 矢島のバカ」
爽はしがみ付いている矢島の腕に
そっと顔つけた。
あ~どうしよう……好きが加速している。
背中に廻されている矢島の腕に力がはいるのを感じた爽。
うそ!抱き締めてくれた?
だったら、嬉しいのに……
ぐるぐるしている頭の中を
矢島に見られているようで
猛烈に恥ずかしくなった。

 矢島は、いちかばちか、かけてみる事にした。
名前を呼び捨てにする事にOKして貰えたら……脈有りだ!
よっし!
「爽さん?爽って呼んで良い?」「えっ…ッ?」
思わず声が上擦り……顔が熱くなるのを感じながら矢島の顔を見上げる。
 見つめ合う瞳と瞳。
「うん……嬉しい……」
やっと顔上げてくれた!
「爽……好きだよ」
耳元で静かに囁く矢島の吐息に
体の奥が反応してしまうのを
感じて、爽はまた俯いてしまった。
 矢島はその反応が愛しくて
思いっきり抱き締めていると、
矢島の胸に顔を埋める爽から
鼻を啜る音が聞こえてくる。
爽の顔を覗き込み、
「鼻を拭くなよ~ククク」
「拭いてないもん!つけてるだけだもん!」
やばい!やばい!これ以上煽るな!
「こら~お仕置きするぞ~」
爽は矢島の腕を抓ると、
顔を上げて思いっきり睨む。
「何しても、可愛いね」
もう……ドキドキが止まらない
甘えるように胸に顔を擦りよせると、矢島は爽の髪にキスをそっと落とした。

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