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朱になる
第1章 運命の出会い
朱音と初めて会ったのは 同僚の結婚式の二次会だった。
半分を貸切にした青山のフレンチレストラン。ウェディングドレスから やや控えめの白のドレスに着替えた花嫁の周りには 年頃の花嫁の友人たちが華やかに取り囲んでいる。
参加している独身男性の中から 伴侶を見つけようとしている熱い視線にへきへきとしながら カウンターに席を移した慎二は ネクタイをゆるめながら水を頼んだ。
奥の半分は やや地味めのグループが占めている。そのグループのひとりだろうか 慎二から ひとつ席を空けて 紺色のニットのアンサンブルを着た朱音が座ったのだ。
「お水をいただけますか?」
同時に ふたつのグラスが出てきた。
ふたりは同時に 手を伸ばした。慎二は なんとなしに 隣をみた。
さっきまで 華やかなきらきらしたものに囲まれていたので 女性の地味な色合いが 野暮ったくみえる。
顔も 一度会ったくらいでは すぐに忘れてしまうような平凡なものだった。
ただ 「お水をいただけますか」と言った声。それは特別だった。まろやかでねっとりしている。
昼間から飲んだお酒のせいもあって 水を飲み干す咽喉元から胸まで 不躾に眺めた。
慎二の視線が痛かったのか ちらりと見て 「ありがとうございます」と 席をたった。
今まで聞いた中で 一番セクシーな「ありがとうございます」だと思った。
そして 一瞬出会った あの目。ぞくり、とする。
地味なニットに包まれた飛び出すようなバスト。
奥のグループに紛れ込む前に確認したお尻も むっちりと艶めかしい。
お酒の力も作用してか
「抱き潰したい、と思うのは おれだけじゃあないだろうな」と 水のグラスを空にした。