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朱になる
第1章 運命の出会い
そんなことをしていたら そろそろ慎二が降りるバス停だ。
「次で 降ります」
というと 「あ、はい」と弾かれたように立ち上がり 慎二を通してくれた。
荷物を胸に抱えなおしたが あの大砲のような胸は 間違いない。
意外と近くに住んでいるのかもしれない。
逃したくないチャンスだったが どうすることもできなかった。
すれ違うとき 「あれっ」と思うような匂いがした。
乳製品が 豊かに発酵したような匂い。
男を 発情させる匂い。
酔っているな、と思った。
後ろ髪を引かれながら バスを降りた。
振り返ると 明るいバスの中で 彼女がこちらを見ているような気がした。
「いや。憶えているはずがないか」
もう会うことはないだろう。いや、案外近くに住んでいて また会えるかもしれない。
酔っているせいか 同じ思いが 何度も行き来する。