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朱になる
第1章 運命の出会い
駅前のスーパーで買い物をしていると
「パセリは もうありませんか?」
という声に慎二は反応した。
さっき 最後のひと束を 慎二が買い物カゴに入れたばかりだった。
駅前のこのスーパーは 珍しい野菜や果物 調味料が手に入るので 料理が好きな慎二は ときおり訪れる。住いから 一番近いのだ。
パセリは 手に入りにくくなっていた。目についたから 買い物籠に入れただけで 別に どうしても必要としているわけではなかった。
ちょっと申し訳ないことをしたかな、と 声の方を見た。
驚いた。
こんな偶然があるのだろうか。
いや。二度目は偶然でも 三度目は 必然のはずだ。
「どうぞ」
差し出されたパセリに驚き 慎二を見て もっと驚いている。
みるみる顔を赤らめ
「いえ。どうしても必要なわけではないので」
「ぼくも 同じです。目についたから 買おうかな、と思っただけで。よかったら どうぞ」
どうしてよいのかわからず もじもじしている。
その幼げな様子に みごとなバストが不釣合いで 妙に艶めかしい。
これは必然だ。
逃してなるものか。
「ぼくは一人暮らしで こんなには要らないし。よかったら半分こにしませんか?」
まぶしそうに慎二を見ている。
ふと、慎二は 自分がイケメンの部類に入るのを思い出した。もっと押しても大丈夫なはずだ。
「パスタを作るつもりです。これからランチを一緒に食べて 残りを持って帰るのは どうですか?」
大胆すぎるか? 怖がらせてしまうだろうか?
困ったように慎二を見ているが 怒る様子もないし 拒絶しているようにも見えない。
「ひとりでの食事には 飽き飽きしているので ご迷惑でなければ。とか、危ない男ですよね。こんなこと」
うつむいた頭が 小さく振られたような。
慎二の男の本能が この女は 逃がしてはならないと告げている。
「こんな風に 女性を誘うのは 初めてなので。恥をかかせないでください」
朱音がかすかに頷いて どうにか収集がついた。