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朱になる
第1章 運命の出会い
慎二は 心底 ほっとした。女たらしがナンパしているようだと我ながら苦笑してしまうが これが最初で最後のチャンスかもしれない。 多少のマイナス点は 後で取り戻せばいい。
黙ってついて来るが 時折 もの問いたげに見上げる。そのたび 極上の笑顔を返してごまかした。
マンションまでの道のりで お互いの自己紹介をしあった。
何度か 初めまして、ではないと告げそうになったが 飲み込んだ。
できるだけ 怖がらせたくなかった。
鍵をあけ ドアを開くと さすがに朱音がひるむのがわかった。
「大丈夫。ぼくはレイプ魔じゃあないから」
朱音は恥ずかしそうに笑ったが 「おや」なにか 違う。さっきまでの雰囲気と 明らかに違っている。
平凡な顔に 灯りがともったようにみえる。
気のせいだろうか。
「一緒に作りませんか?」
「わたし おしゃれなものは 作れません」
料理をすることは正解だった。
朱音の可哀想なくらいの緊張は 次第にほぐれていった。
しかも 朱音の小さな手の動きは 料理すると しなやかで優雅だった。母の手馴れたたくましい動きとは まったく違う。慎二は つい見惚れてしまった。