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ムッツリ最高
第13章 旅1 行きのパーキングで
席にきちんと座り直した私に、彼はちょっと視線を寄せて、また前を向きながら、左手を伸ばして、私の右手を握ってくれる。
私はとても嬉しくなって、その上に左手を乗せて、彼の手を包み込む。
会いたかったよ・・・。
囁くような彼の言葉に、身体が熱くなる。
初めて二人で会った日から、三週間は、週末は毎回二人で夜通し快楽を分かち合っていた。
でも、先月末、いつもよりも強く激しく彼に抱かれて、その後に彼から、しばらく会えないと告げられた。
妻が、新しい事業を起こすんだ。
そのお披露目に、週末はずっと付き合わされる。
親戚や関係者の前では、あの人は円満な夫婦を演じたがる・・・。特に、今回は、夫婦で入るケアハウスの事業で・・・。
彼は、暗く翳った目で、妻との関係を話してくれた。
大学時代、彼は、恋愛とはこんなものだろうと、その妻となる人と交際していたこと。
妻となる人は、この地方で有名な建設業を経営する一族の長女だったこと。
彼女は人一倍プライドが高いのに、精神的に不安定で、大学を出る頃には、錯乱することもあったこと。
そんな彼女と周りに追い立てられるように結婚したこと。
彼女の弟が結婚してからは、早く子供を作らなければ一族が乗っ取られると、彼女が強迫観念でおかしくなったこと。
結局弟に先に男の子ができてからは、彼のことを種無し、不能と、蔑むようになったこと。
そして、何度頼んでも、別れてくれないこと、
今では、別々の部屋に住みながら、でも、一族に恥を晒したくない、と、離婚だけは拒み続けること。
一度、離婚調停をしようとしたんだよ。
そしたら、絵に描いたように、彼女は僕の部屋のバスルームで、手首を切ったんだ・・・。
愛もない。なんの繋がりもない。でも、僕は、この軛から逃れられない。
臆病で、ずるいと、嫌になるかい?
不安そうな彼の瞳を見つめて、私はキスをした。