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ムッツリ最高〜隆の想い〜
第16章 幾度も


 彼女は、まだ僕の胸元に顔を寄せたまま、小さく聞いた。



どうして、会えないの?




妻が、新しい事業を起こすんだ。
そのお披露目に、週末はずっと付き合わされる。
親戚や関係者の前では、あの人は円満な夫婦を演じたがる・・・。特に、今回は、夫婦で入るケアハウスの事業で・・・。



 彼女は、ただ無言で、僕の胸元にいる。
 僕は不安で、彼女の瞳を覗き込んだ。


 彼女は、僕から目を逸らす。



 僕は、彼女に呆れられるかもしれないと、身体の芯が冷えて行くような悲しみを堪えながら、これまで僕を繋いできた軛について、話していった。



 大学時代、恋愛とはこんなものだろうと、その妻となった女と交際していたこと。
 妻となった女は、この地方で有名な建設業を経営する一族の長女だったこと。
 彼女は人一倍プライドが高いのに、精神的に不安定で、大学を出る頃には、錯乱することもあったこと。


 そんな彼女と周りに追い立てられるように結婚したこと。


 彼女の弟が結婚してからは、早く子供を作らなければ一族が乗っ取られると、彼女が強迫観念でおかしくなったこと。
 結局、弟に先に男の子ができてからは、僕のことを、種無し、不能と、蔑むようになったこと。



 そして、何度頼んでも、別れてくれないこと、



 今では、別々の家に住みながら、でも、一族に恥を晒したくない、と、離婚だけは拒み続けること。



 こんな僕を、彼女はやはり、呆れてしまうだろうか・・・僕は不安で、身が震えるような思いで彼女に聞いた。



一度、離婚調停をしようとしたんだよ。
そしたら、絵に描いたように、彼女は僕の部屋のバスルームで、手首を切ったんだ・・・。
愛もない。なんの繋がりもない。でも、僕は、この軛から逃れられない。
臆病で、ずるいと、嫌になるかい?



 彼女は僕の腰に手を巻き付けるように抱きついてきて、話し始める。



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