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ムッツリ最高〜隆の想い〜
第13章 赤い紐
電話は長くなりそうな気配だった。クミは、ハイになっている時の癖で、自分の話の意味のないタイミングで、何故か笑うのだ。
それは、初対面の人や、クミを元から好きではない人にとっては、馬鹿にされているように感じるようで、彼女はよく対人トラブルを起こしていた。
それを若い頃、僕が良かれと思って癖を見直した方がいいとアドバイスしたら、クミはまさに烈火の如く怒り、家中のものを投げて、わからない相手が馬鹿なのだと、それに媚びるような自分ではないと、大声で喚き散らした。
今日のようなハイな時は特に、脈絡のないような会話の中に、時々、聞いておかないと後で自分が面倒に巻き込まれるような情報が入っているのでとても困る。聞き流していて、後でもう一度聴くと、バカだとか、使えないとか、時間の無駄だとか、罵られるのだ。
僕は、彼女の取り止めのないような話をスピーカーホンにして、注意して情報を聞きながら、今日出かける用意をする。
それで、大橋社長がね、ああ、大橋社長は大学の時の後輩がたまたま入れた会社の社長でね、ワイン会で後輩を通じて知り合ったのよ。ふふふっ、もう、面白い社長でね、フランスのワインを樽買いするような人でね、ふふふっ、ワインって樽買いすると、ビンテージとかついた時にはすごく儲かるらしいのよねー。それを投資にしてる人もいるらしいのよ。ふふふっ・・・
ひとまず、聴くべきことは、なさそうだ・・・
僕は、今日、何を着ていくかを悩んで、薄いブルーの麻のシャツに紺色のコットンのパンツを合わせることにした。
シャツにアイロンをかける準備をしながら彼女のことを思う。
鈴音はどんな格好で着てくれるだろう・・・僕がまた、妄想を羽ばたかせてしまいそうになった時だった。
だから、泊まりは東京の赤坂だから。赤坂クラリオンホテルね。
突然、クミの言葉の中に、聴くべき情報が聞こえて慌てる。
なんとかそれを聞き出そうと、僕ば慌てて返事をする。
ああ、赤坂。それは7月4日のことだよね?