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ムッツリ最高〜隆の想い〜
第13章 赤い紐


ちがうわよ、7月11日の日の方よ。たまたまワイン会の話をしたから、初めに赤坂のホテルを言っただけで、7月4日は名古屋よ。


 クミは、よく時系列も何もかもぐちゃぐちゃで話すのだ。


 まだ、あと二週分も、彼女の脇道にそれる話を聞きながら、泊まる宿を聞き出すのは辛すぎる・・・。

 僕はなるべくクミを刺激しないように遠回しに言う。



ほら、こんな風に混乱するから、行程をメールででも送ってくれないかな?


ああ、それは新しい秘書に遅らせるから。
ふふっ、今度の秘書の人、私のこと、美魔女とかいうのよ。何言ってんだろって感じよね。ふふっ、美魔女って言ったら、ほら、私の高校の同級生の、和美、あの子がまた整形したっぽくて、美魔女とか言われてて。ふふっ、あんなのと一緒にされたくないわよ。
それで、名古屋の時にはね・・・



 これ以上は、もう我慢できそうにない。僕は、行程が送られてくるなら、と、クミの話を遮った。



ごめん、ちょっと出かけたいから、話は、行程を見て、質問があったら僕から聞くよ。



え、土曜のこんな時間から出かけるの?



 クミの声が冷たく尖る気がする。


なに?人とでも会うの?


いや、ちょっと散髪にでも行きたいだけだよ。予約の時間もあるし。


散髪?何時からなの?


 時計を見て、今が4時半なのを確認し、咄嗟に答える。


5時からだよ。


随分遅くに散髪の予約するのね。


土曜日はゆっくり寝たいからね。


 それで終わってくれるかと思ったら、クミはまだ喋り始める。


じゃあ、最後に一つだけ大事なことを言うとね、要するに・・・


 これまで、クミが「要するに」と言って、話を要約したことはない。そこから、「要するに」を15回は連発して、話をぐるぐるしながらやっと話を終えた。


じゃあ切るからね!


 一方的に電話を切られて、ほっとしながら、僕は慌てるように時計を見た。その時はもう5時を過ぎていた。


 僕は慌てて、シャツにアイロンをかけ、そして、バッグに丁寧にあの紐の入った袋を入れる。


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