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冬物語 〜ドSな彼氏は私の後輩〜
第1章 冬華とお漏らし
「わた、わたし、ね……ウッ……小学校…フッ…一年生の…フッ…時に…ね……フグッ……おも…らし…ヒッ……しちゃったの……フゥッ……」


冬馬は静かに立ち上がり、じっと冬華の儚い声に耳を傾ける。
冬華は目元をか細い指で擦りながら、話を続ける。


「周りの……子がね……ウッ……汚い…って……ウグッ……わたしは……汚いんだって……ウゥゥゥ……だから……ウゥ……わた…し……汚い…の……ヒッ…ヒッ……ヒグッ……ウゥゥゥ」


冬華の悲しげな嗚咽が浴室に響き渡る。
冬馬は静かに、ゆっくりと、冬華を抱き寄せ、片の手で頭を優しく包み込む。


「冬華さんが汚いなんて、誰が決めたんですか?本当に汚い人間は、人の失敗を笑って悦に浸る、冬華さんを虐めた奴らです。」


冬馬の言葉に呼応する様に、冬華の腕が冬馬の背中に回り、指がギュッとシャツを握り締める。
冬馬は続ける。


「でも、ごめんなさい、冬華さんの過去を知らずに、無理にやらせてしまいました。僕も、最低な人間の一人です。」


「ちが…う……ちが…うの……と、冬馬くんは……違うの……私……冬馬くん……大好き…だから……冬馬くんなら……大丈夫かなって…思って……」


「いえ、それでも、僕が冬華さんのトラウマを思い起こさせてしまい、現に泣かせてしまったのは事実です。本当に、ごめんなさい」


反省なのか、謝罪なのか、感謝なのか、愛情なのか。
それは二人にしか分からない。
抱き締め合う二人は物言わぬまま、静かに時だけが流れていく。
ふと、冬馬が再び口を開く。


「あっ、そう言えば僕も、お漏らしした事、ありますよ。」


「えっ、と、冬馬くんが?」


「はい、あれは確か……僕も20年前だったと思います。」


「20年前……って、あれ?冬馬くん今24歳だよね?4歳でしょ?そんなの、みんなお漏らしする頃じゃん!」


「お漏らしはお漏らしです。僕も、冬華さんと一緒です。冬華さんが汚いと言うなら、僕も汚いです。」


「ダメだよ、そんなの!だって、私は小学生になってからで……」


「誰だって小さい頃はお漏らしをします。失敗もします。その失敗が無くなるのが、他の人より少し早いか遅いかの違いだけです。スタートは全員一緒です。ゴールのタイムがほんの少し違うだけ。人生で見れば、どんぐりの背比べです。人なんて、みんなそんなものですよ。」
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