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マッスルとマシュマロ
第9章 はじめてのトレーニング


 華が着替えて更衣室を出ると、宏樹がそばに来て深々と頭を下げた。


「平井様、本当に申し訳ありませんでした。」


「いえ、そんな・・・。」


「いや、僕がお勧めしたウェアで、あんなことになって・・・。」



 あんなこと・・・その言葉で、華の身体を、さっき感じた宏樹の指の感触が駆け巡り、また身体の奥が熱くなる。



 そして、濡れたような黒々とした瞳でじっと見据えながら、宏樹が言った。



「これで、このジムに来なくなるなんてことは・・・ないですよね?」


 縋るように言われ、華は、胸がキュンとした。それは、さっきまでの欲情とは違う、宏樹を護りたい、と言う母性のような気持ちだった。


「そんなことは・・・私の方こそご迷惑をかけて・・・。」

 その言葉を聞いて、宏樹はにこやかに笑った。


「よかった・・・。安心しました。」

 端正な顔の男の破顔とは、なんと魅力的なのだろう。

 華は、さっきまでの痴態を忘れ、ただ、その宏樹の笑顔にみとれてしまった。


「今日はほとんどトレーニングできていませんから、どこかで代替の時間を入れましょう。」



 タブレット開きながら聞かれ、我に帰った華は、自分のスマホを慌てて出す。



「えっと・・・」
「今週なら、いつがいいですか?」
「木曜日なら・・・」



 その日は、ギャラリーの絵の入れ替えで、受付業務は一日休みなのだ。


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