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マッスルとマシュマロ
第13章 縋る女
夏菜子が、個人フォルダに入れていた研究を、パスワードを盗み見て、侵入していたらしい。夏菜子はひどくそれを気にしており、その後の奈保の身の振り方も案じてやっていた。
しかし、研究室を辞めて2ヶ月後には夏菜子に何の連絡もなく、同じ大学の他の研究室に転がり込んだらしい。
「いい噂は聞かないわ。身体を使って潜り込んだとか、他の学生に言われてて。なんだかひどく痩せてきたしね。でも、学内ですれ違っても、私とは、目も合わせてくれないわ。」
夏菜子から聞き、宏樹も少しは責任を感じたものの、仕方ない、と思っていた。
それ以来、初めて会う、奈保だった。
奈保は馴れ馴れしく、宏樹の腕に手を置く。
「私、今、違う研究室で、今度ドクターコースに行くんですよ。」
「そうなんですね・・・あの、僕はそろそろバスの時間なので。」
「あら、久しぶりに会ったんだもの、もう少し話しましょうよ。」
奈保子は、その張り出した胸を、わざと宏樹に押し付けてきた。
(勘弁してほしい・・・。振り払うべきなのか?)
その時、厚い雨雲から雷の音がした。
「きやっ!」
奈保子が宏樹に抱きつく。
そして、雷が鳴り終わっても、離れようとしない。
大粒の雨が降り始める。