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マッスルとマシュマロ
第15章 陽の光の中で


 そんな宏樹の目線に気づきもせず、華は嬉しげに言う。



「夫からね、私の歩き方は、ポテポテしてるって、言われたことがあるんです。」



 あれは、息子が高校に入った記念に、一緒に長野旅行に行った時・・・。
 3人で散歩をしながら、夫に揶揄うように言われたのだ。

「こんな風に歩けば、もう、そんなこと、言われないかな。」



 ただ、その思い出は、嫌なものではなかった。夫が微笑みながら言ってくれて、華は夫が自分を見てくれていることにときめいたのだ。



 華は、夫を、まるで片思いする女子高生のように想っている。どこか、いつも届かないような夫。毎日一緒にいても、その思いが満たされることはなかった・・・。



 高校からの、一番中の良い友人に、夫への気持ちを話すと、彼女からは言われたのだ。


「家庭内片想いだね。」


 確かに、そういう感覚だと、華も思っている。



少しは、痩せて綺麗になれば、この想いが届くことはあるかしら・・・。

 華は、その思いで、必死に腹を引っ込め、足を真っ直ぐに出して歩いてみる。


あの、モデルのような人は颯爽と歩いていたな・・・。



 不意に、夫と歩いていた女の事を思い出して、華の胸が痛む。



長野で・・・あの人も一緒なのかもしれない・・・。


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