この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マッスルとマシュマロ
第15章 陽の光の中で
そんな宏樹の目線に気づきもせず、華は嬉しげに言う。
「夫からね、私の歩き方は、ポテポテしてるって、言われたことがあるんです。」
あれは、息子が高校に入った記念に、一緒に長野旅行に行った時・・・。
3人で散歩をしながら、夫に揶揄うように言われたのだ。
「こんな風に歩けば、もう、そんなこと、言われないかな。」
ただ、その思い出は、嫌なものではなかった。夫が微笑みながら言ってくれて、華は夫が自分を見てくれていることにときめいたのだ。
華は、夫を、まるで片思いする女子高生のように想っている。どこか、いつも届かないような夫。毎日一緒にいても、その思いが満たされることはなかった・・・。
高校からの、一番中の良い友人に、夫への気持ちを話すと、彼女からは言われたのだ。
「家庭内片想いだね。」
確かに、そういう感覚だと、華も思っている。
少しは、痩せて綺麗になれば、この想いが届くことはあるかしら・・・。
華は、その思いで、必死に腹を引っ込め、足を真っ直ぐに出して歩いてみる。
あの、モデルのような人は颯爽と歩いていたな・・・。
不意に、夫と歩いていた女の事を思い出して、華の胸が痛む。
長野で・・・あの人も一緒なのかもしれない・・・。