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マッスルとマシュマロ
第16章 熱
「先生、それを飲んでしまったら、送っていきますから。」
「いや、そんな・・・」
断ろうとする宏樹を意に介さず、華は重ねて聞いた。
「かかりつけの病院はありますか?」
「いや、この、扁桃腺の痛みは、年に一度くらい、なってしまうので・・・これはもう、熱が下がるまでの対症療法しかなくて・・・解熱剤は家にあります。」
華は、宏樹の熱のある顔を見ていると、まるで夫や息子の具合の悪い顔を見せられているようで、放っておけなくなっていた。
あの、早く治ってほしいとジリジリするような、その苦しみも代わってあげられたらいいのに、と思うような気持ちが、宏樹の顔を見ていると湧き上がってくる。
特に、息子の病気の時の顔とあまりに似ていて、華の母性が大きく盛り上がってしまったのだ。
先ほどまで、あんなひどいことをされていたとしても、こんなに息子に似ていては、放っておけない・・・。
「よかった。じゃあ、とにかく、家までお送りしますから、安静にしないと。」
宏樹は頭痛もひどくなって、顔は火照るのに背中はゾクゾクするような感触を味わい、自分でもまずい、と思い始めていた。