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マッスルとマシュマロ
第20章 生い立ち
母は、ダイニングテーブルに座って、赤ワインを飲みながら、宏樹の出生について話し始めた。
20歳の時、少しだけ関係のあった二つ上の同じ大学の男との間に宏樹ができたこと。
予想外だったけれど、一人で産むと決めたこと。
すぐにその男とは別れて、男には告げずに一年休学して宏樹を産んだこと。
そんな自分でも平等に扱ってくれるだろうと、国家公務員になったこと。
そして、どこからか自分の子どもだと知った男から、2年ほど前に手紙が来て、相当な額の預金が預けられたこと。
「父親のことが知りたいなら、そこに、その人のことが書いてあるわ。」
母の実家は、処方箋薬局を広く展開する法人を経営していて、宏樹が生まれてすぐに祖父は亡くなり、母は、大きな遺産を手にしていた。
その余裕もあって、宏樹を家政婦に任せて、仕事に邁進し、今は官僚としてもかなりのポストについていた。