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マッスルとマシュマロ
第26章 違う日常
また、竜馬の面影に、その感触に飲まれそうな自分の意識を取り戻すように、嬉しそうにお焼きの箱を開ける華の横に並んで、一緒にそれを眺める。
華は、そんな正弘の想いには気づいていなかった。むしろ、いつもよりも少し饒舌で、そして優しい夫にほっとしていた。
いつものように三揃いのスーツをすっきりと着こなし、少しネクタイを緩めたその姿をうっとりと眺める。
ただ、帰ってきた時から、華は、その顔を宏樹と重ねて、似たところを探してしまう。
そして、今、いつもよりもゆったりした雰囲気で、正弘が隣に立って、一緒にお土産を覗いてくれることに、少女のように心を弾ませていた。
「あら、美味しそう。皮が、いつもいただいているものよりふっくらしてる感じなのね?」
「そうだね。今から、少し、いただいてみようか。」
「こんな時間に食べていいかしら・・・でも、美味しそう。我慢できないわ。」
「我慢なんてしなくていいよ。」
正弘は、華の頭をポンポンと、撫でてくれる。
華は、嬉しげに答える。
「じゃあ食べちゃおっと。正弘さんは何にする?」
「僕はかぼちゃかな。」
「じゃあ私はあんこにしちゃおう。お茶入れますから、着替えていらしたら?」
「そうするよ。」