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マッスルとマシュマロ
第28章 初めての口づけ


 華はまた、ゆったりと微笑んで、言う。



「もう、本当に、お身体は大丈夫?」


 宏樹は、照れるように答える。


「さっき、しっかりワークアウトもしたし。もう大丈夫。」



 華がそっと手を伸ばし、前頭に触れる。



「うん・・・熱も大丈夫ね。」



 華は、夫と似た、少し張り出した前頭を触りたくなって、熱を確かめるふりをしたのだ。


 そして、宏樹にとっては、少し温かく、柔らかな手のひらで触れられ、そんなに近くまで身体を寄せられて、全身が痺れるように感じていた。



「着替えてきます・・・」



 手を離して、華は更衣室に向かう。宏樹はまるで吸い寄せられるように華についていく。



 華には、宏樹がついてきてくれることが、実は嬉しかった。さっきの、自分を見る瞳。何かが目の奥に沸るようで、夫に似た目で、自分をそんなふうに見つめられるのが堪らなく嬉しかった。

 更衣室のドアを開け、中に入ると、宏樹も一緒に入ってくる。




「お着替えするところに、一緒に入ってきたら、ダメだわ・・・」



 華は宏樹の方を向いて、優しく悪戯を嗜める母のように言いながら、その耳元に手を伸ばし、耳と頬を優しく撫でた。




この耳元も、本当に似ている・・・。



 宏樹はその手を自分で包んで、目を閉じた。


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