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マッスルとマシュマロ
第28章 初めての口づけ


 華は、高揚していた。まるで、青年時代の正弘に、自分から口づけしたような気持ちになっていたのだ。



 その人が、夫に似た、黒目がちの瞳で、まっすぐに自分を見ている。




「どうして、そんなに、私を見るの?」



 華は尋ねてみた。


「ああ・・・そんなつもりは・・・」


 宏樹は、華に言われて、自分が華を見つめてしまっていることに気づいた。



 慌てるように目を逸らす。

 そして、ポツリと聞いた。


「さっきの・・・・」
「さっきの?」
「どうして、キスを・・・?」



 華は、自分でも、どうしてだろう、と考えていた。



咄嗟にしてしまったことだけれど・・・。
それは、多分、夫にいつもしたいことだからだ・・・。夫は、ほとんど、キスもしてくれたことがない。
夫と、若い頃に付き合っていれば、あんな風に、簡単にキスできたのかしら・・・。



 華がそんなふうに夫に思いを馳せている無言の間、宏樹は焦れるようにその答えを待った。



 でも、華は一向に答える気配はなく、ぼんやりとしている。



 宏樹はとうとうたまらなくなり、華の肩をそっと掴んで自分に向けさせた。


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