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マッスルとマシュマロ
第39章 告白
正弘は、メガネとネクタイを外し、ジャケットだけ脱いで、竜馬に添い寝をした。そしてその肩元に首を乗せ、腕と足を絡めて竜馬を抱きしめる。
「竜馬さん、少し、寝なよ。すごく、疲れた顔をしてるよ・・・」
「そうだな・・・」
そう言いながらも、竜馬は、ぼんやりと目を開いたまま、天井を見上げている。
正弘は、竜馬の胸の上に置いていた手で、その少し白髪の混じった胸毛を撫ぜながら聞いた。
「何か、あった・・・?」
ふぅっ・・・。
深い深いため息をついて、竜馬は天井を見上げなら、呟いた。
「あの頃・・・お前と、寮の部屋で夜通しじゃれあってた・・・あの頃が、俺は、一番幸せだったんだ・・・。」
正弘が竜馬の顔を肩先から見上げると、竜馬の開いたままの目尻から、一筋、涙が落ちていた。
「竜馬さん・・・」
竜馬はまだ、天井を見上げ続けている。
正弘は、そっと、唇を寄せ、竜馬の頬にある涙に口付けた。
そして、耳元に口を寄せて、囁くように言った。
「僕も・・・幸せだった・・・」
竜馬はその唇の柔らかさに、その言葉の優しさに、遠い闇の淵から戻ってくるように、正弘の瞳を見つめた。
「正弘・・・」
竜馬が優しく正弘を抱きしめる。
「あの頃・・・何も言わずに・・・お前から離れた俺を・・・この前も・・・昨日も、お前を傷つけた俺を・・・許してくれるのか?」
「あの頃・・・竜馬さんに、捨てられたと思って・・・悲しかったけど・・・でも、憎んでたわけじゃないよ。僕には、竜馬さんは、ずっと・・・忘れられない、大好きな人だよ,」
その言葉を聞いて、竜馬は正弘を抱きしめる腕に力を込め、優しいキスを、愛おしさを込めたキスを正弘に与えた。
正弘の体にも、その竜馬の愛情が伝わり、鳩尾の奥が痺れるような感覚が広がってゆく。
そして、また、優しく正弘を胸に抱いて、竜馬は少しずつ話し始めた。
「俺が、高校二年の夏・・・親父の経営してた建設会社が、倒産したんだ・・・。」
竜馬が高校二年の夏・・・それは、突然、竜馬から冷たくされた、あの夏・・・。