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マッスルとマシュマロ
第39章 告白
「家はぐちゃぐちゃだったし・・・おれは、もう、あの学校にいられなくなるところだったんだ・・・」
でも、正弘の中で、あの頃の竜馬は、いつもみんなの中心にいて、スポーツも万能で成績も良い、学校でも指折りの人気者だった。
そんな苦悩は、周囲には全く感じさせてはいなかった。
「そんな時、母方の親戚が、俺の学費を出すと・・・家の面倒を見ると・・・」
竜馬はそこで、軽く息を吐いた。
ふうっ・・・。
その頃の辛い思いが、まだ竜馬の心を締め付けるのか、少し眉根を寄せて、話を続ける。
「苦労知らずの母は、大喜びで・・・でも、その条件が、医学部に行き、医者になって、そこの娘と結婚することだったわけさ・・・。」
そんなことが・・・。
正弘は、あの夏休み明け、やっと竜馬に会えると、心を弾ませながら待っていた気持ち、でも自習室にも全く現れず、学校で見かけても、まるで自分を避けるようにどこかに行ってしまう姿を、思い出していた。
「ごめん・・・そんなことがあってたなんて・・・僕は、捨てられたとばかり・・・」
竜馬がまた、正弘を抱きしめる腕の力を強くした。
「会いたかったよ・・・お前とじゃれあって、お前が俺をまっすぐに見つめて、全てを崇拝してくれてたあの瞳を・・・見ていたかった・・・。
でも、受験に失敗するわけにいかない俺は・・・予備校漬けだったし・・・。」
そして、正弘の顔を覗き込み、その顎をくいっと持ち上げ、軽く口付け、掠れ声で言った。
「お前を抱いたら・・・まるで身売りをするような自分に・・・戻れなくなるから・・・あの夏・・・お前のそばには、いられなくなったんだよ・・・」
「ごめん・・・竜馬さん・・・僕、知らなくて・・・」
正弘は竜馬の頬に、額を寄せ、首に抱きついた。
「いいんだよ・・・俺は、お前に、いつまでも・・・かっこいい先輩でいたくて・・・」
そんな竜馬の首筋に正弘は、すがるように唇を寄せ、熱に浮かされたようにその名前を呼んでしまう。
「竜馬さん・・・ああ・・・竜馬さん・・・」