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マッスルとマシュマロ
第41章 欲望に呑まれる
華が、ジムの最寄りの駅で降り、降り立ったホームの電車が過ぎ去った時だった。
向かいのホームに、宏樹の後姿が見えた。
まだ朝の通勤ラッシュ時間だった。そんな人混みの中でも、華の目は引きつけられる。
宏樹も、慌てるようにトレーニングを終え、手早くシャワーを浴びてから、自分の家に向かうために駅で電車に乗ろうとしていたのだ。
「あっ・・・。」
宏樹の姿を見て、心臓がドクンとして、華は小さな声を上げてしまう。
宏樹は、トレーニングウェアにスポーツバッグを持っていた。トレーニングウェアが、ピッタリと身体に沿っていて、そのスタイルを一段と際立たせる。
大きな背中。太い腕。
それを見るだけで、また華の膣奥がぎゅうんと収縮してしまう。
華はスマートフォンを出し、宏樹に電話した。
後姿から、宏樹がポケットから電話を取り出して耳につけたのが見える。
あの、正弘さんと同じ耳に、私の声が届くんだわ・・・。
華は、倒錯した快感を覚えながら、宏樹が電話に応答するのを待つ。
「もしもし?」
宏樹の少し低めで、爽やかな声が華の耳に届く。
「宏樹さん、後ろを見て。反対のホーム。」
宏樹が振り返る。華は、そっと右手を挙げていた。
通勤でごった返すホームの中でも、宏樹の目は華だけを捉える。