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マッスルとマシュマロ
第44章 嫉妬
正弘は、その男のことを思うと、胸が痛む。その男は、真っ直ぐに正弘を求め、その熱情に絆されるように関係を持った。
その真っ直ぐさは、まるで竜馬に恋していた時の自分を見るようだった。
そして、自分は、その男の思いを利用するように、その肉欲を埋めてきたのだ。
「ほら、話せよ・・・。」
竜馬が正弘の耳たぶを甘く噛む。
「その子は、うちの社員だったんだ・・・長野の工場で・・・でも、男しか愛せなくて。仕草や容姿を、男らしくないと、田舎では揶揄されていた・・・。」
肌の白い、まだ男の制服を着せられていた、華奢なその子のことを正弘は思い出す。
「ある日、偶然、その子が工場の屋上で泣いているのを見てしまって。」
その時、正弘も息子が産まれて一年たったくらいの頃だった。親戚から、二人目を早く作れ、と、急かすように言われ、でもそんな気持ちにならないまま、このまま華を騙すように夫婦でいていいのかと思い悩んでいた時。
少しでもすっきりした思いになりたくて、仕事の合間に、カラマツの森とそれから連なる信州の山並みを見ようと、屋上に出た時。
同じように思い悩んだ目で山並みを見つめる美しい青年を見たのだった。