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マッスルとマシュマロ
第47章 心を柔らかくするもの


「ああ・・・これが・・・」



 宏樹の反応と言葉に、夏菜子が少し驚き、そして納得、という顔をした。



「初めて、なのね・・・。」



 こんなに完成された男の姿をしながら、どこか少年のような清廉さ、冷たさとも言っていいものがあると、これまでの宏樹のことを見てきた。

 その男に訪れた、少し呆けたような、体の輪郭を緩やかにするような、そんな変化。


 姉のように、その恋を見守ってやりたい、と思う気持ちと、共同研究者として、スケジュールを管理せねばならない、という責任感と、そして研究的好奇心から、この男が初めて恋に落ちた相手への興味と・・・夏菜子にも思いが渦巻き、ただ一言、聞いていた。



「どんな・・・」



どんな人なのだろう。どんな出会いをしたのだろう。どんな、恋、なのだろう・・・。



 宏樹も、それを尋ねられて、なんと答えようか、と思いながら、夏菜子に、全てを打ち明けたい、とも思っていた。



 これまで、どんな女性と付き合っても、それを他人に話そうとも、話したいとも思ったことはなかった。自分の研究のために多くの女を相手にしても、研究に関係のないことは夏菜子に話す気にもならなかった。

 なのに、今は、華の話をしたくてたまらないのだった。どれほど彼女が魅力的か、彼女が今日、自分に言ってくれた言葉、見せてくれた姿で、どれほど自分が幸せな気持ちになったか・・・。




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