この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マッスルとマシュマロ
第9章 はじめてのトレーニング
華は、少しホッとしたような顔を見せた。
宏樹はまた華の隣のマシーンに乗り、華と同じスピードで歩き始める。
そして、華に話しかけてみる。
「ダイエットは、どうして?」
「あ、私、こんなで・・・痩せたら、少しは・・・」
そこで華が悲しげな表情になり、言葉をつぐんだ。
華は心の中で呟くように思っている。
少しは、夫に、振り向いてもらいたい・・・。
「少しは?」
宏樹が重ねて聞くと、華は、宏樹にに向かって微笑んだ。
「少しは、素敵なお洋服でも着られるかと思って。」
「平井様は、今でも十分、素敵ですよ。」
華は、その真剣な声音にドギマギして宏樹を見る。宏樹はその黒目がちな大きな目で華を見つめ返した。
華は、鼓動が早くなり、前を向いて、自分のはしたなさを心で咎めた。
(これは、営業用のリップサービスなんだから。私なんかがこんなことでドギマギするなんて、恥ずかしい・・・。)
そして、何もないような雰囲気で宏樹に聞く。
「高山先生はマラソンの選手だったってお聞きしましたけど、林田先生も何かスポーツしてらしたの?」
「僕は小学校の頃からサッカーを、高校までしてましたよ。」
「あら、うちの息子と同じだわ。」
華の顔が、本当に寛いだ笑顔になった。その、息子が可愛くて仕方がない、と言う雰囲気に、また宏樹の感情が揺さぶられる。
こんな、母の顔をしながら、あの電車の中で、あんなに濡れてしまう女・・・。
自分が優しく包まれながら、その女の痴態を引き出したい・・・。