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愛妻を抱かせる
第7章 母親の夢
俺は毎晩、酒を飲んでは荒れる父親から

自分の身を守ることしか考えられなかった。

ろくなものを食べてなかったし、中学では弁当だって

米がある時は自分でご飯を炊いて梅干しを乗せて持っていった。

父親は何もしてくれないので自分でやるしかなかった。

制服の洗濯だって毎日出来ない。これも自分でやっていたが

他の子は毎日洗濯されたカッターシャツに

母親がアイロンをかけてくれて、パリッと折り目のついた

清潔で清楚な装いを整えてもらえる。

そんな中で俺はこのありさま。かっこうのいじめの対象になる。

容姿を馬鹿にされ、育ちを馬鹿にされ、

耐え難いが、家に引きこもるわけにも行かない。

父親がいる。ろくに仕事もせずに昼間から酒を浴びて

時々タバコ臭い女が上がり込んではナンカやっていた。

そんな時は気を利かせて近くの公園で暇をつぶしていた。

そこで学校の面倒臭い奴らに捕まってはストレスの吐口に

された。

こんな調子だから高校なんて行けるわけがない。

父親からも離れたかったから住み込みで働ける食品工場に

就職した。

今は自分でアパートを借りて一人暮らしが出来るまでになったが、

将来の展望など描けるはずもなかった。

こんな生活からどうにか抜け出したい。

時々金の無心をしてくる父親からも離れてどこが遠くに、

俺のことを誰も知らない土地で新しい人生を再スタートさせたいと

思うようになった。しかし、あてもなかった。

こんな俺は恋愛などほど遠く、女性と接することさえ

怖くて出来なかった。でも、妄想は膨らむ。

母性に触れたかった。お母さんってどんなだろう。

もし自分にお母さんがいたら、どんな感じなんだろう。

よその子が母親としているみたいに、

手を繋いで買い物に出かけたり、抱きしめて頬ずりされたり

してみたい。温かい布団の中で母の腕に抱かれ眠りにつきたい。

まちがっているもしれないけど、今回の募集に応募すれば、

もしかすると少しは夢が叶うかもしれない。

だが、気持ちが強すぎて間違いを犯してしまった。






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